「健康とは単に病気ではない状態を示すのではなく、心身ともに、また社会的にも完全に良好な状態」と定義しているそうです。
誰がって? WHOですよ。世界保健機構です。だから誰って、WHOは世界保健機構です。
生活を送るのに欠かせないのは毎日の食事。毎日のことですから、健康を維持するためには良質な食の習慣を身につけなければなりません。
イチから蒟蒻を作る? しかもかまどで?
わからないことだらけですがご安心を。産山が誇る「食の名人」が手取り足取り教えてくださいますから。
「坊主とこんにゃくは田舎が良い」と申します。
都会の世俗にまみれた坊さんよりも、田舎の素朴な坊さんがいい。
混ぜ物の多い白いこんにゃくよりも、産山のお母ちゃんたちが畑で穫った芋から作るこんにゃくが旨い。
「蒟蒻芋」の存在くらいは承知してたんですが、黒くてゴツゴツしたあの蒟蒻芋が、一体どうやってあの柔らかくて弾力のあるこんにゃくに姿を変えるんでしょうかね?
第6回産山社子屋【食と健康】
かまどで作る蒟蒻教室
日時:2017年2月28日
講師:西林 キヌ子さんと産山村蒟蒻部会の皆さん
手づくりこんにゃくの“てまひま”と奥の深さが心に沁みます。
霜柱の残る会場・竹の畑お試し滞在住宅に集まった産山村蒟蒻部会の皆さん。
かまどに杉の枯葉と薪を放り込み、手際よく火を起こしていきます。
釜にたっぷりのお湯を沸かしたら、洗った蒟蒻芋を放り込みます。え、皮は剥かないの?
「皮を剥くのは茹でた後。その方が速いし無駄が少ないから」
茹だった蒟蒻芋は釜からあげられ、蒟蒻部会の皆さんは豪快に湯気を立てている蒟蒻芋の皮を、素手で手早く剥いていきます。
「素手で……。熱くないんですか?」
「熱いよ。やってみる?」
やってみた。とんでもなく熱い。とてもじゃないけど2秒と触っていられない。どうして?
涼しい顔で下準備が終わったところで本日の参加者の皆さんが続々と集まってきました。かまどに残る火と茹で上がった蒟蒻芋に興味津々の様子。「さて、始めましょうか」西林さんの号令とともに調理場は一気に活気付きます。真剣に和気藹々と、蒟蒻芋をミキサーにかけペースト状にしていきます。
「ミキサーの音が変わったら止めて」と講師の井さん。皆さん、ミキサーのスイッチを入れ耳を傾けますが、音の変化がよくわかりません。「ほら、今! 音が変わったでしょ」「???」
しかし何度かやっていくうちに、参加者の皆さんにも微妙な音の変化がわかるようになりました。
ペースト状になった芋に灰汁を加えていきます。この灰汁も、木を燃やした灰から作ったもの。これを捏ねていくと、徐々に手応えが重くなって、こんにゃくっぽくなっていくのがわかります。これを丸く成形するとさらにこんにゃくっぽい。お子様たちはこの工程が一番楽しかったようです(大人も?)。丸く成形したものを再び煮ていきます。調理場はかまどの煙と釜の湯気、参加者の熱気が篭り火災報知器も作動する中、こんにゃくは4時間をかけてようやく完成。
講師の猪さんによれば、蒟蒻芋は調理に使えるようになるまでに3年かかるそうです。3年かけて育てた芋を、さらにこんなに手間暇をかけて、ようやくこんにゃくになるのですね。
もちろん試食会は否応なしに盛り上がります。楽しくて美味しくて、熱い一日でした。
INTERVIEW講師インタビュー
みなさんは生まれも育ちも産山の人なんですか?
私(朱美さん)は生まれも育ちも熊本市内。水前寺からお嫁にきたんですよ。
熊本市の繁華街から産山村ですか。環境の違いに抵抗はなかったですか?
全然。阿蘇の自然がとにかく大好きだったから。ここで暮らせるのが嬉しくてたまらなくて。
もちろん、村で暮らし始めた当初はわからないことばかりで、ちょっとだけ戸惑いましたけどね。裏山に出かけて手ぶらで帰ると怒られたりね。
「なんで手ぶらか。山に入ったなら柴でも拾って帰って来んか」って(笑)
当時は煮炊きにもお風呂にも、とにかく薪が必要でしたから。蒟蒻を作る時は灰まで使いますよ。
木を燃やした後の灰まで使うんですか?
灰は何にでも使えますよ。鍋についた煤なんて灰で磨けば簡単に綺麗になるし、畑に撒けば肥料にもなります。
蒟蒻芋って、茹でたり焼いたりしても食べられないんですか?
やめといたほうがいい(笑)エグ味が強くて。そのエグ味を取るために、灰から作った灰汁を使うんです。
工程を見ていると、蒟蒻作りってとにかく時間も手間もかかるんですね。スーパーで買えば安いのに。
そうですね。でもスーパーで安く売られてるのは蒟蒻の粉を使って作った外国産のものなんです。
私たちのは村で獲れた蒟蒻芋を使って、手間暇かけて作ったもの。添加物も入ってないし、やっぱり全然違いますよ。
ところで、かまどのところに置いてある木の枠って何ですか?
これは鍋敷き。昔はよく使ってました。お釜も乗せられるように大きく作ってある。
みんなそれぞれ自分で作るんですよ。だから家ごとに少しずつ形が違う。田舎では何でも自分で作らないとね。
町まで買いに行くより早いし、自分で作ればお金もかからないですもんね。
冬なんか、雪で道がふさがってどこにも行けなくなる日もありますけどね。
それでも生きて行く術がここにはある。
私は産山にお嫁に来てもう何十年にもなりますけど、季節が変わるごとに、あぁ、この時期にはこういうものが採れて、こうやって保存して、調理して、食べて。こんな風に生きて行くんだって。
少しずついろんな知恵を身につけました。蒟蒻作りもその中のひとつです。せっかく田舎にいるんだから、いろいろ作れるようになりたいですからね。
産山村蒟蒻部会 会長の西林キヌ子さん。働き者でほとんど家に居ません。
ご注文の方は根気よく電話してみてください(笑)
TEL:0967-25-2602
産山村蒟蒻部会のみなさん:
井 紀和子さん・工藤 文子さん・猪 朱美さん