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喜戸とうふ店の巻

この水で、豆腐をつくる。
大根農家から豆腐屋へ。

ご主人は、元大根農家。20年、ひたすら大根を作り続けてきた畑の人。日に千本も抜いてきた。そしてある日、手を休めて、こう思った。「今までは雨風にさらされる人生だった。家族にも苦労をかけてきた。ここらでひとつ、違う仕事をしてみるか」と。その時、昔、祖母が営んでいた豆腐屋を思い出した。「あの時分はまだ、バケツに豆腐を入れて、近所に配達したな。よく手伝ったなあ」。

雨風にさらされて働いてきた伴侶に感謝。豆腐屋に転職したお二人。

名水、池山水源の水で豆腐を作ろうと心に決めた。「この水で豆腐を作る」と心に決めて修練してきた。あれから12年、「豆腐づくりは、今でも難しい」というご主人が差し出してくれた「寄せ豆腐」を私も一口いただいた。とろける。かすかな甘みがする。豆腐というものは、これほどまでに水に影響するものなのか、と驚いてしまう。水源に美味しい水を求めて訪れるように、ここに美味しい豆腐を求めて立ち寄る。そんな旅もよいと思った。喜戸とうふは、水と大豆本来の甘みが生きた味。ちなみに豆腐は、店頭で醤油をいただき、その場で食べることもできる。作り立てのうまさは格別。

昔ながらのお豆腐屋さん。店内で醤油をもらって食べるという手もあり。
朝、豆腐をつくる息子さん。名水仕込み。見ていると食べたくなってくる。

目印は、店頭にある、等身大「くまモン」と産山のゆるキャラ「うぶちゃん」。これもご主人作。くまモンは県から正式に申請番号を取得したもの。うぶちゃんの頭には豆腐の容器を使用。とても素人技とは思えない。完璧にキャラクターを再現。聞けば、ご主人。木彫、大工仕事、店舗改修も自分でやってしまう匠の人。これほどの匠が、「豆腐は難しい」とは、この仕事、なんと深い世界なのだろう。ちなみに店の裏側の増設工事も現在、自分でやっている。店が広くなったらイートインスペースで豆腐の味比べをしてみたいと思った次第。

現在では豆腐の仕込みを息子さんが助け、名水仕込みの豆腐を作っている。朝日に照らされて豆腐づくりをする姿、すごく頼もしく見える。絹・木綿、厚揚げ、油揚げ、寄せどうふ、黒ごま・黒大豆を使った黒五豆腐も人気。旅館や温泉にも納めているから、産山に泊まった時に、あなたも口にするかもしれない。とろける旨さをぜひ一度ご堪能を。

目印は等身大ゆるキャラ。くまモンも、うぶちゃんも。これ、本物と見紛う出来なのだ。

記者余談 :
訪れたのは2月。店内にはお雛様とお孫さんの写真がありました。それと豆乳の容器に清涼飲料のものを再利用。環境にも優しい。親しみやすく、味本位のところがよいですね。

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