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酒米研究会の巻

村の名を背負った
無農薬の純米吟醸酒。

無農薬米の栽培経験40年。そんな渡辺さんたちが「とっておきの酒を」と、こだわって作り上げたのが純米吟醸酒「産山村」。始めたのは20年ほど前。当時「夏子の酒」という漫画が流行し、幻の酒ブームが起こった頃。「幻の酒を造りたかったのですか」と伺ったら、渡辺さんは、こう断言。「私たちは3つの誓いを立てました。(1)奇をてらわない。酒米は土地に合ったものを使う。(2)自然に逆らって作らない。除草は鯉農法。(3)自分たちで作った米で、こだわって作る完全無農薬。」。まさに自然体。

無農薬酒米「五百万石」の玄米。こだわりの酒米で酒を造るのだ。

発足した酒米研究会の農家メンバーは、まず高地低温の産山の土地に合う酒米の選定からスタート。酒米に詳しい大学教授と連携し、検証を重ね、選んだ品種は「五百万石」。米の名産地 新潟で銘酒を生み出してきたこの米を、池山水源の水を引く田で、有機無農薬栽培で育てることに挑戦したのだ。日本で酒米といえば、「山田錦」が中心だが、産山の気候風土を考えて、あえて「五百万石」を選んだのが勝因のひとつ。

米焼酎も造っている。もちろんこちらも無農薬米である。

「酒米買うなら、土地を買え」という言葉がある。無農薬を徹底するには、除草方法にもこだわりが必要。そこで、渡邊さんたちは、昔ながらの鯉を田に放つ「鯉農法」を採用。鯉は合鴨に比べて、早期から投入でき、除草や害虫の駆除も期待できる。一方で、天敵を呼び込む。青サギだ。しかし、さすが米作り40年のベテラン。仲間と協力して、細いテグス線を張り巡らし、鯉を守り切った。「絶対に食わしてなるものか」という執念が実りへと結びつくのだ。

田植えの時期に放流された鯉は害虫を食べ、稲の間を泳ぐことで除草効果もある。

精米率は55%。熊本酵母使用。日本酒度+3~+4、酸度1.6~2.1、アルコール度15度。純米吟醸酒で最高のものを目指し、できあがった酒は、「かつて飲んだことがないような上品な味」。女性からも「飲みやすい」と評判に。村の名「産山村」をラベルに背負うから、絶対にいい加減なものは作れない。以来20年間、研鑽を重ねて、品質向上に努めてきた。その味は、スッと身体に沁みわたる、産山の水源が神様の力で酒に変えられたような天上の味である。

酒米研究会の渡辺さん。自分たちで飲む最高の酒を、と20年。

記者余談 :
村中を探し、ようやく1本発見。しかし、あっという間に空瓶に。名残惜しく酒瓶の裏ラベルを眺めれば、そこには酒米の生産者名だけではなく、鯉の生産者の名前まで書かれていました。実直。とても真面目なラベル表記。もし、見つけたら、即買いです。

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